ハオルチアの洞

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アニメ感想 #10 『装甲騎兵ボトムズ』(1983)

78/100点 オススメ度☆☆☆

15/20 シナリオ(構成、オリジナリティ等)

15/20 キャラクター(魅力的、印象的か等)

14/20 作画(枚数やカット(場面)数、線の崩れ等)

18/20 OP・ED楽曲、劇中曲、効果音等

16/20 演出(不自然さがないか、シナリオ・作画・楽曲の組み合わせが効果的か等)

※オススメ度の目安については最後

 

今回はリアルロボット系の金字塔ボトムズです。どんな雰囲気かは動画をどうぞ。

youtu.be

 

 

凄腕兵士の正体と運命は

宇宙へ飛び出し星間戦争をするような未来のSFロボット作品です。ただ機体の性能はガンダムよりは小型で控えめ。ビームのような光学兵器もない。

 

銀河を二分して100年も続くギルガメスとバララント間の戦争末期、ギルガメス軍兵士のキリコは転属早々任務で基地を襲撃するがそれは友軍のものだった。

困惑するも基地内で不意に気を引いたコンテナを開けるとそこには一人の女が寝ていた。部隊が基地で探していたものだと言う。不信感を増しながら指示に従った矢先に裏切られて爆弾を投げ込まれ口封じされそうになる。奇跡的に難を逃れ他のギルガメス軍に回収、尋問されるが女の存在を知ってしまったキリコは裏切った部隊だけでなく正規のギルガメス軍にとっても味方ではなかった。

 

星をまたぐ逃亡と事件の真相を追い求める冒険、脳裏から離れないコンテナの女と自身も知らなかった己の出自との関係は一体、といった内容です。

 

 

※以下ネタバレ注意

 

むせるほどハードボイルド

まず世界観と雰囲気がいいです。長い戦争末期で環境も人も宇宙進出してる文明の割にボロボロ。北斗の拳みたいな世紀末感、ポストアポカリプス感がずっとあって好きな人多いと思います。星を移動して行くのでビルが立ち並ぶブレードランナー*1のような街や、砂漠だったり密林だったりと色んな舞台があり、50話以上の長編でも同じ画が続かない、飽きがこないようになっているのはいい。

 

主人公のキリコが渋くてカッコイイ。物語に合わせて成長するタイプの作品ではないのでアムロみたいにウジウジしたりヤケクソにならず、かといって明るく陽気というわけでもなく、とにかく淡々と戦って、あがいて、生き抜いて真実を追い女と仲間を守るっていう鉄のゆで卵。むせる。予告も詩的で半分くらい何言ってるか分からないのがいい。

 

ロボ周りの描写が細かくていい。物理法則に従わない不思議な力を使わないからリアル系ってわけじゃない。機体のカメラが用途に合わせて回転して切り替わるとか、乗り込んだ後にスーツと機体をつなぐコードを接続する動作をするとか、片足は釘を地面に撃ち固定し足裏のキャタピラを動かすことで高速ターンする等表現にこだわっているのが感じられていいです。

 

OPED曲がめちゃくちゃいい。50話以上あってもずっと同じ曲という、ここでも硬派を貫いてくるんですがもうそれでいい。それがいい。映像とあいまった作品の雰囲気作りが完璧すぎる。

 

爆発と粗とオチ

とにかく爆破描写が多い。戦闘中も締めもとにかく爆発させとけば画が持つだろと言わんばかりに爆発しまくる。ロケラン乱発で街が爆発し崩壊、大口径とはいえ拳銃で機体が爆発、原因がなんでも壊れた機体は爆発。ちょっと雑に感じました。

 

ちょいちょい不自然な進行がある。全くの謎で知らないと言っていたPSについて急に語りだす、必要性を感じないキャラの尺を引っ張る等、細かいので具体的に書くのは省きますが粗が気になる部分がまぁまぁあります。最後まで観て考えれば辻褄を合わせられる疑問点もあるんですが完全ではないです。

 

鉄と油と硝煙、単純な構造のリアル系ロボの戦闘を散々やっておいて超存在や超能力が話の中心になるというのもやや気になる点。完全に悪いというわけではないんですがやはり戦場で無双する設定上特異な能力を持ってないとおかしいという方向しかないのでしょうか。

 

黒幕の正体と倒し方はそれでいいのか?ってなりましたね。宇宙を支配するまでの存在がそんな嘘簡単に信じちゃうのか?なんだこのアスレチック試練は?引き出し引っこ抜けるんかい。自分が作った存在に自分を倒せない制限や精神的な誘導をかけてこなかったのはなぜ?という疑問が残る。この手のボスにありがちなんですが全能の逆説*2に近い問題が起きやすいんですよね。よく言われてる指摘だと作中の”天才”、”最強”設定は作者の知能に制限されるたり扱いに困るというアレです。*3

 

君もむせよう

古い作品なので若い方や慣れていない方が観るには、アニメ自体の質という意味ではそのぶん視聴時に心づもりがいるかもしれませんが、今でも十分楽しめると思います。

 

今でも話題になったりミームが使われている程の作品ですから視る価値はあるでしょう。個人的には予想ほどの衝撃や勢いみたいなものはありませんでしたが期待しすぎたのかもしれません。OVAの方は未チェックでそちらが本番という可能性もあるのでいずれ視たいと思います。

 

ではまた、

 

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※オススメ度の目安は以下の通りです。

  • ☆    :もの好きなら
  • ☆☆   :よっぽど暇なら
  • ☆☆☆  :好きなジャンルなら楽しめる
  • ☆☆☆☆ :間違いない面白さ
  • ☆☆☆☆☆:観ないと損

*1:今の人はサイバーパンクと行った方がいいか?

*2:全能の逆説 - Wikipedia

*3:五条先生も封印送りにされた挙句・・・