ハオルチアの洞

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アニメ感想 #7 『機動戦士Zガンダム』(1985)

今回はシリーズ2作品目のZガンダム。なんと50話です。

 

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だんだんとブログの文体がフランクになってきていますがツッコミどころが多い本作のせいでより進みそうです。よろしければいわゆる「ファースト」と呼ばれる前作の感想も記事にしているのでそちらからどうぞ。

 

やや長いですが専門用語を最低限にし、今回のものと合わせて読んでいただくと「ガンダムって何?オタクや男の子向けのでしょ?興味ないです」という方でも話として理解はできるようにしています。(用語もたぶん)

 

 

※以下ネタバレを多分に含むのでご注意ください

 

ガンダムと言えば2022年10月現在、シリーズ最新作の「機動戦士ガンダム 水星の魔女」が放送中ですが、ガンダムには大きく2種類に分けられるらしいです。

 

この左側の作品は、同じ世界で別の時期の話、右側は世界(舞台)そのものが別で独立しているんですね。Zガンダムは左側の作品で、ファーストのおよそ7年後を描いている続きにあたります。「水星の魔女」や知名度があると思われる「SEED」「00」「オルフェンズ」は皆右側なので単体で観ても困らないというわけです。

 

すべての作品に共通しているのは人が乗って操縦するロボット(シリーズでは人型のモビルスーツやそれ以外はモビルアーマーと呼称される)で戦うという点でしょうか。シリーズ毎に「〇〇ガンダム」と名前の付いた機体が登場します(たぶん)。

 

「説明しない」は健在。

前回の記事でも書きましたがとにかく説明がない。機体の名前、人名、地名、どれも数多く登場するがとにかく放置される。*1

その場しのぎのように本当に最低限を話の冒頭と終わりのナレーションにぶん投げているのですが、説明していない固有名詞を使うものだから余計に状況が分からないという視聴者置いてけぼりスタイル。

なぜ、どこで、なんのために戦っているのかが非常に把握し辛い。ここでまたいいツイートを見かけたので貼ります。

 

つまり製作サイドもご承知というわけだったのです。

話の雑なつながりも、唐突な戦闘も、場所なのか艦なのか物なのかも分からない固有名詞も、分からなくていいわけです。*2

 

いや明らかに分かった方がいい部分まで放置してるって。

 

特に50話もあるのにメインストーリーの流れが良く分からないのはマズイ。初代もそもそもなんで戦争してるのという背景が説明されていないので書きましたが、Zも作中では敵側の目的がはっきりしないんですよね。Zの流れはおよそ以下の通りです。

 

一年戦争(初代の内容)後、敗北したジオンの生き残りは投降せず、大半は資源用に持っていた小惑星アクシズ)に逃げる。中にはジオン(ザビ家)正統後継のミネバという幼女やシャア*3もいた。

アクシズを基地として改造。連邦と再戦したい派と穏健派の小競り合いが起きるが穏健派が勝ち力を蓄える。シャアが連邦の偵察のためアクシズを離れる。(後にクワトロという偽名でエゥーゴに参加)

・ミネバはまだ幼いため摂政としてアクシズを率いていたハマーン・カーンはジオン再興のためアクシズごと地球近くに移動開始。

一方連邦はアクシズに逃げなかったジオン残党の攻撃を受け、残党狩りと銘打った組織(ティターンズ)を作る。しかしやり方が過激で、しだいに連邦内でも反感を買い反ティターンズ組織(エゥーゴ)が生まれ、内紛状態になる(本作1話~)

 

いや面白い展開じゃん!大事でしょこれ!でも全く触れられない。全くその通りだと誰が思ったのかは知らないが、この辺りの話は別作品として描かれています。

 

むしろ本編でやるのは小競り合いばかりで大局はろくに進まない部分。

前回も地球側と宇宙移民側の軋轢による対立が戦争の原因という大事な点なんとなく示唆されている、くらいでした。

 

背景が分からない中、ティターンズはコロニー*4に毒ガスを撒いたり月面にコロニーを落とそうとしたり超巨大レーザーでコロニーを撃つ等連邦の人々をテロ行為で従わせようと滅茶苦茶に暴れまくる。普通は一体何が目的なんだとなります。*5

戦いは混乱を極め最終的にアクシズティターンズエゥーゴの三つ巴となり、ジオンは戦場からまた離脱、ティターンズは壊滅、反戦主義だったが戦わざる運命を背負わされた主人公、カミーユは戦場での度重なる別れに心が壊れてしまい終わります。*6

 

余談ですが私の記憶が正しければZ29話にしてやっと、初代にもセリフにないはずなので初めて有名なミノフスキー粒子*7という単語が本編で出ます。どれだけ説明する気ないんだよ

 

またラスト超能力フィーチャーか!

初代同様白黒はっきりさせないオチが渋いのはいいとして、物語を締める手段として唐突にニュータイプの力を強力に描写し始める展開までなぞる必要はあったのか、という気はします。

それまで「なんか強いプレッシャーを感じる、誰々が危ないかも」くらいだったのが、ジョジョ*8のスタンドみたいに色付きオーラをまとったり死んだ人物が語り合ったりし始めます。熱気高まる決戦の場で能力が進化・解放されると言えば聞こえはいいですが、伏線も根拠も語られてないんですよね。こういったバランスの崩れ方は作品としての完成度を下げてしまっていると感じました。

 

そんなことより登場人物が

50話の説明放棄に再びのまとめのニュータイプ描写と気になる点を挙げましたが、それよりもひどいのは登場人物です。より観るのがダレるのに拍車をかけます。順番に紹介しましょう。

 

カミーユ・ビダン

「何でそんな簡単に人を殺すんだよ!死んでしまえ!」

「そんなにシロッコに抱かれたいのかーッ!」

主人公。学生だったが連邦の内紛に巻き込まれエゥーゴパイロットとなる。従軍のいきさつもあり厭戦的で人の死に敏感だが「出てこなければやられなかったのに」という強者の理論でモブは容赦なく殺します。*9

一方敵側だろうがテレパシーをやり取りできる同類の女にはガールフレンドに近い存在はほっぽらかし軍の命令も無視してでも殺さずしつこく停戦を呼びかけイチャイチャしまくるのも低評価。彼女らにはなんやかんかで拒否され逃げられ死んでいくのでちょっとかわいそうではある。

たぶん置かれてる境遇に対して自分が一番どうしたらいいか分かってない。自分は望んだわけじゃないから人殺しじゃないと言い張るが結局敵対相手を殺している事には変わりません。

いくら戦いや環境破壊の愚かさを説いたところで承知の上で向かって来ることをいい加減分かれよと、すぐに怒る激情的な言動と合わせてストレスに思う人がいるでしょう。後半割と大人しくなりますし、もっとヤバイ連中がわんさか出てくるので自分は気になりませんでした。*10

 

ジェリド・メサ

女の名前なのに・・・なんだ男か

俺を戦いに駆り立てたのは貴様だ!

ティターンズ所属パイロット、(一応)主人公のライバル。イキり癖でカミーユの名前をバカにしたせいで殴られる。カミーユが短気なイカれたやつという感想の人が多いが、初対面ですらない人間の名前を揶揄するのは殴られても文句言えないと思います。(実際殴るかは別として)

敗北し任務失敗、撤退を重ねるもなぜか上官や知り合う女性パイロット2人には好かれる。次々と貴重な機体に乗り換える。中尉程度でティターンズ総帥と打ち合わせをするなど待遇の良さがご都合主義的。*11

ティターンズの非人道的な大量破壊兵器の使用、非戦闘員の虐殺作戦を戦争を早く終わらせるため(脅しとして)という方便にも反感をもたないどころか、前述の女性パイロット2人がカミーユに撃墜されたこともありすべてカミーユ個人への恨みを晴らすためだけに利用しようとするサイコパス小物。

 

パプテマス・シロッコ

落ちろ カトンボ

私だけが死ぬわけがない 貴様の心も 一緒に連れて行く・・・

ティターンズの指揮官。機体の設計もでき操縦、戦闘能力も高く、カリスマ性があるという設定。実際は女好きで洗脳に近いたらしこみが得意な傍観者気取りのキザ野郎です。女性の肩や顔を触り都合のいい言葉を囁き操る

嫌がる相手の腰に手をまわし抱き寄せアゴクイ、女扱いされたかったんだろうと都合よく言い当てる。セクハラが不快です。髪型もなんかキモイ。

死に際にニュータイプ能力を怨念のように用い道連れとしてカミーユの心を壊してしまうが「ニュータイプってそんなことできるの!?」という前述の唐突な超能力展開を悪目立ちさせる一端を担ってしまった。

 

レコア・ロンド

男達は戦いばかりで、女を道具に使うことしか思いつかない…!もしくは、女を辱めることしか、知らないのよ!

エゥーゴの士官だったが裏切る。シャアと良い関係だったが望む扱いをしてくれなかったため結局利用されるとしても承知でセクハラしてくれるシロッコについていくことにした。「アーガマ*12の男達は自分の事しか考えていなかった」と言うが「自分の心に従いたい、という主義なんです」と好きな男を乗り換えるという私情で堂々と裏切り自分の勝手は5mくらい上の棚にあげた女

おそらく並みの高さでは特大のブーメランが突き刺さった頭がつかえるからでしょう。一応大勢の市民やアーガマの人間が死ぬのは嫌らしく気をまわしてくれるが「レコアさんは勝手だよ!」「レコアさんは自分が何をやっているか分からない」と好き勝手にやってるカミーユにすらクリティカルなド正論を言われてしまう

フォローすると忌まわしき戦場でしか生きる術を持たなかったのでせめて女として優しくされたかったという悲しい人間ではあります。

 

〇カツ・コバヤシ

名言コーナーもいらないくらいひたすらにキモイです。まず軍人なのに自分の欲望優先で命令無視しすぎ(多くの他のキャラにも言えることだが)。経験も実力もない一兵卒が勝手に機体に乗って出撃してやられる。普通だったら軍法会議で除隊されてもおかしくない。

投降してきた敵の女パイロット(サラ)に一目ぼれして、部屋へ連行されるところをフラフラとついていく。油売るなと言われてその場を離れる描写があるのに、しばらくしてドアがまた開いたときにぬっと出てくるのが気持ち悪すぎる。帰ったフリしてずっと待ってましたよコイツ。直後明らかに怪しいサラにちょっと優しくされてあっさり脱走に利用される。*13

一時期出て来なくなりますが再登場時から急におとなしくなってるのも逆に気持ち悪い。かと思えば組織の方針が気にくわないと指揮官に反抗し出撃命令に従わない。しかしカミーユが捕らえたサラの声を聴いた途端に出撃して迎えに行く。その後ブリーフィングをすっぽかし監視カメラから離れずにサラを監視するシーンはガチで引きました

その後もサラのために要人暗殺を企て命令無視して勝手に単独出撃したり、最終的には戦場で味方の制止を聞かず無理して死亡、死んだ後もどの面さげて言ってるんだという達観したセリフを吐きながらオーラとして登場と不快指数がエグい。*14

 

その他戦時下で明らかに怪しい主人公の妹を自称する妹を簡単に艦に乗せる(案の定敵だった)、保護した子供がドッグからブリッジまで自由に侵入、第三勢力ボスのハマーンもあからさまなシロッコの腹芸を見抜けない小物ぶりなど、不自然、不快なキャラクターが多すぎます。索敵や弾幕なんかよりどうなってんの!*15と言いたくなる。印象に残る良いキャラもいるんですけどね・・・

 

その他の評価ポイント

当時にしては女性の平等を謳うシーンがあります。ただ女性側の言い分の筋が通ってなくて(シャアの適当な擁護もむなしい)結局ヒスやだだこねてるようなってしまったり、男側の気遣いがセクハラまがいになったりと惜しいです。

24話前後から作画の技術革新レベルの明確な向上がみられます。特に後期OP映像冒頭の破片等がわかりやすいです。メカニック面の細かい作画、線が綺麗になります。(何話だったかはメモし忘れましたがキャラの顔が全体的に崩れるのが1話だけありました。)

OPやED曲は素晴らしい名曲ぞろいですが劇伴(BGMや効果音)の種類の少なさ、ややシーンに合わない安っぽさが気になりました。

登場機体の種類が人型から飛行型と変形するもの、丸っこくてかわいいのから、カッコイイもの、ダサいのまで一気に増えます。覚えられないほどでマンネリを感じさせず良かったです。

 

まとめ

まだまだ書こうと思えば色々あるんですが絞ってこの長さになってしまいました。*16

物語の面白さという部分がもっと欲しかったです。それを置いても戦いの不毛さやキャラクターの葛藤等を描きたかったのでしょうが、素材の良さを活かせず粗さと無駄と不自然さが勝ってしまった。正直ダレて50話観るのが苦痛でした。

 

ZZに期待しつつ今回はこの辺りで。

 

 

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*1:だから記事が長くなるのよ

*2:私はムズムズするので都度とめて検索しながら観ましたが

*3:初代の敵、アムロのライバル

*4:宇宙に作った人工の超巨大植民地

*5:実は大量虐殺で増えすぎた人口を減らし、地球を再生したかったらしいが言及なし

*6:なんかスイカバー食べたくなってきたな

*7:宇宙空間で重火器ばかりの戦闘にならないようロボット同士が殴り合いする絵を作るために急遽後付けで存在することになったレーダーを狂わせる謎物質。遍在するわけではななく薄かったり濃かったりする。

*8:ジョジョの奇妙な冒険 - Wikipedia

*9:実際設定上最強のニュータイプ

*10:ヤベーやつである事には変わらないが

*11:一応敗北に敗北を重ねても生き残っていることが評価されたらしい。

*12:エゥーゴの艦

*13:空手やってたのに

*14:ついでに言うと主人公や敵ボスクラスしか持っていないニュータイプ能力を中途半端に持ってるのもキモイ

*15:ブライトさん

*16:大体カツが気持ち悪いのが悪い