ハオルチアの洞

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アニメ感想 #9 『便利屋斎藤さん、異世界に行く』(2023)

79/100点 オススメ度☆☆☆

16/20 シナリオ(構成、オリジナリティ等)

17/20 キャラクター(魅力的、印象的か等)

16/20 作画(枚数やカット(場面)数、線の崩れ等)

15/20 OP・ED楽曲、劇中曲、効果音等

15/20 演出(不自然さがないか、シナリオ・作画・楽曲の組み合わせが効果的か等)

 

※オススメ度の目安は以下の通りです。

  • ☆    :もの好きなら
  • ☆☆   :よっぽど暇なら
  • ☆☆☆  :好きなジャンルなら楽しめる
  • ☆☆☆☆ :間違いない面白さ
  • ☆☆☆☆☆:観ないと損

 

今回はWeb漫画配信が原作の「便利屋斎藤さん、異世界に行く」です。

新作ですね。どんな感じかはいつものPVをどうぞ。

 

 

youtu.be

 

 

ただでさえ拙い原作を低い質でアニメ化され続けて、もう異世界転生はいいよ・・・という感じですが、まだクールに1、2本は「これはガチで面白いやつのアニメ化だから」というのがあるのが凄いですよね。

 

本作は大当たりの大作というほどではありませんがその辺りの有象無象とは違う良作であることは間違いないでしょう。

 

本当に何も強化されない異世界転生

異世界転生モノは大抵主人公は生前に失敗者、敗者である場合が多いです。転生時に神様から人知を変えた力をボーナスとしてもらい、新しい世界で強大な力をふるいヒロインや仲間に好感を得て、今度こそはと人生をやり直す。身もふたもない言い方ですがここに弱者男性の受け手が現実の自分を重ねて流行したことは否定できないでしょう。

たまの”転生しても最弱”を謳う作品も、そうは言っても抜け穴や神とは別の方法で強くなり結局無双したり、結局どこかで一芸秀でてる、というのもよくある話。

 

「斎藤さん」も地球ではしがない便利屋でした。しかし転送されても本当になんのボーナスも強化もなし。魔法もありモンスターと戦う世界なのに。スローライフでもないのに。

ダンジョンに挑む冒険者パーティに入った斎藤は便利屋の技術を活かして防具やカバンを修理したり宝箱の鍵を開けたりと戦闘以外の部分で貢献するが・・・というストーリーになります。

 

居場所を得るのに魔法はいらない

現実の我々には特別な力がなくても知人、友人やパートナーがいます。思いやり、気遣いだったり日々の何気ない会話や交わりによって自分の居場所を持っています。

斎藤は異世界でも日本では感謝もろくにされなかった便利屋と同じ仕事をします。なので当初は役に立っているのか、求められているのかあまり自身がなかったものの、派手ではないが確実に、そうした人としての普通の丁寧さ突然飛ばされた異世界で他人に求められるようになり、救われる。

 

無双や俺TUEEEE*1といった弱者男性向けのカタルシスは確かに少ないかもしれませんがこのリアリティがいい玉石混交激しい異世界転生モノの中で、作者の差別化の工夫、狙いは間違いなくここにあるでしょう。

 

クセのあるキャラクターと少し変わった構成も注目

wikiを見て知ったのですが本作の構成はグランド・ホテル形式というようです。物語に関係する様々なグループの設定や背景を順に紹介していき、だんだんとまとめて盛り上げる、という形式になります。

物忘れで呪文を唱えられない魔法使いやあっさりやられて王様と友達になる魔王、恋に落ちる冷酷な暗殺者、人気、ルックス、政治権力で選ばれた勇者パーティ等クセのあるキャラばかりで印象に残ります。日常コメディタッチで各グループを紹介し伏線を張っていき、シリアスな本編で回収するわけです。

 

この形式は斎藤のグループが主役ではあるんですが、敵や他の冒険者仲間の物語も触れられるので作品に深みや説得力が増すのがメリットです。どの人物にもそれぞれの人生(現実)がある事を補強するこの形はリアリティのある斎藤の救われ方との相性も良いです。

 

一方いちいち登場人物の回想シーンを挟まないと本筋が進まないので、短いながらもよくまとめてはいましたがどうしてもテンポの悪さがあったり没入感は得にくいように感じました。

 

気になる点はあるが要素を上手くまとめた良作

異世界転生モノでの差別化の工夫とグランド・ホテル形式という構成の強みをうまく合わせた点はとても良かったです。

 

気になった点もいくつか紹介。まずキャラクターをここまでコメディに寄せるなら本筋をここまでシリアスにする必要あったのかなという気もします。身体の欠損等の描写が多いです。

 

細かい点かもしれませんが自分の中の「魔法の呪文」のルール的に、詠唱途中で詰まったり何度か言い直したり別のことを喋っても問題ないのはあまり好ましくなかったです。話の都合上そうでないと冗長になるのでしょうが。

 

最終話で取ってつけたように登場人物を全員斎藤さんを頼りに来させる描写と、世界観に合ってないクソダサいダンスを全員で急に踊りだします。必要ないですしここまで良い感じにやって来たのに不自然すぎます。

街を歩いてる中先々で皆に声をかけられ仕事を頼まれる、という形でダンスはなしで良かったと思います。謎ダンスする程作画枚数に余裕があるなら他の所の質を上げればよかったのでは・・・

 

OPED曲は普通、作画は崩れなしで魔法のエフェクトも良し。点数とオススメ度は冒頭通りです。

 

ではまた。※過去記事の点数は順次つけていく予定です。

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