ハオルチアの洞

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映画感想 #7『スパイダーマン(2002)』

86/100点 オススメ度*1☆☆☆☆

16/20 シナリオ(設定、構成、オリジナリティ等)

18/20 キャラクター(演技、魅力的、印象的か等)

17/20 映像(CG、合成の自然さ、印象的なシーン等)

17/20 劇中曲、効果音等

18/20 演出(演技・映像・楽曲の組み合わせが効果的か等)

 

今回からご存じマーベルのアメコミ原作映画「スパイダーマン」最初の3作続けて書きます。

ニューヨークの冴えない高校生、ピーターは社会見学で訪れた生物研究所で遺伝子改造されたクモに噛まれて様々なクモの能力を得て超人化してしまう。伯父の教えによりその力を正体を隠しながらも人々のために使う事にしたピーターを待つ運命とは─

 

ではいつものPVをどうぞ。

youtu.be

 

 

なんか「スパイダーマン」ってたくさんない?

なんかいっぱい映画つくられててよくわからんという方も割といるかと思います。自分もそうでした。まずアメリカでの最初の実写化映画が今回の3部作です。

 

続きを制作するにあたって、ハリウッドじゃありがちな権利や制作での揉め事があり、別のプロジェクトとして改めて作ったのが次の2作(アメイジング系)で、これも3作目を作ろうとしたところで頓挫。

 

他のマーベルシリーズの実写映画と世界観を合わせるためにまた一から作りだしたのが現行の3作(ホーム系)ということみたいです。監督もキャスティングもその都度変わりますし、多少設定も異なります。

 

 

※以下ネタバレ注意

 

ジ・アメリカなヒーロー映画

ピーターは両親を早くに亡くしていて、伯父夫婦が育ての親代わり。ガリガリ陰キャ眼鏡から一転、ムキムキなクモ男として壁に張り付き、糸でNYのビル群を飛び回る力を手にした。いつもイジメてきたクラスメイトも仕返せたし、ずっと気になっていたけどまともに声をかけられなかった女の子(メリー・ジェーン:以下MJ)にもアタックする勇気になれた。と調子に乗っていた所、見逃した強盗が伯父さんを殺してしまう。

自責の念と伯父さんが残した言葉「大いなる力は大いなる責任が伴う」によって犯罪や事故から街、人を守るヒーロー活動に励む。

 

敵役はクラスメイト、親友ハリーの父親、ノーマン。軍事企業の社長であり科学者だったが、兵器開発が上手くいかず軍から資金の援助を打ち切られそうになる。実験段階の肉体改造薬を自分に投与して挽回を図るが、副作用で生まれた攻撃的な別人格にたびたび意識を乗っ取られ怪人「グリーンゴブリン」として街で暴れまわるように。

 

お手本のようなアメリカンなヒーロー映画ですね。力を手に入れて調子に乗り過ぎたり苦悩したり、一度は負けたりしつつも最後は正義を為し敵も倒し恋も成就(?)、皆に認められて、好かれて、人間としても成長、めでたしめでたし、みたいなね。

 

観なおしたら思ったより違う視点が

最近見直したのでこうして記事を書いているんですが、最初に観た時とは結構印象が変わって驚きました。まずちょっとエッチでしたね。ヒロインの胸元が結構開いた衣装が多く、どう見てもノーブラで揺れまくり、濡れて〇首浮いてるけどこれ大丈夫かよというシーンまであります。*2なぜ初見の思春期真っ只中の自分が覚えてないのかが謎ですが、逆に大人になって邪な心になってしまったということなんでしょうか・・・

 

歳を取ったと言えば伯父さん伯母さんとピーターの会話をより感傷的に感じました。親類も亡くなりましたし、両親の皺も増えましたので・・・若者の万能感、危うさと先達の心配や言葉の重みも両方理解できるとシーンの見え方も変わります。

 

グリーンゴブリンはただ暴れたい悪役じゃない、というのも新しい気付きでした。努力してるのに仕事が上手くいかない、相手にされずあしらわれる冷たい社会への怒りなんですよ。もう俺は人を信じないぞという悲哀の化身、まさに現代人が抱えがちな悩みじゃないですか。誰の心にもある感情でただの悪だと簡単には片付けられない。

 

実際スパイダーマンに仲間になるように言うシーンがあります。消費される側でなく持ち上げられる側に来い、人々のために戦っても嫌われるだけだ、俺たちで無闇に戦って街を壊すのがいいのかと。

 

同じ時期に人より優れた力を手にした二人ですが、報われなかったから人を支配するために使うのか、どんなに報われなくても人のために使うのか、という対比構造になっているんですね。子供の時はこういう作り手側の上手さに気付けなかったです。

 

また最初の三部作通してのポイントなんですがスパーダーマンは絶対に殺しをしないのも明らかに意図的です。他のマーベルヒーローと違い、そもそもが「大いなる力は大いなる責任が伴う」「自分が悪を見逃して失った命と許し」がテーマなので、敵でさえも直接手を下すことはしません。自爆なら死ぬとわかっててもセーフ

 

細かいことはいいんだよ*3

気になる点もあると言えばあるので紹介しましょう。まずいくら遺伝子組み換えた「俺が考えた最強の蜘蛛」に噛まれても人間がクモ化することはありえないでしょう。人間に蜘蛛能力与えるために作られた蜘蛛でもないですし。ウィルスや毒で遺伝子が傷つくことはあるかもしれませんが数日で体を作り変えてしまう程の変態や、容姿は変化しない、体も頑丈になるといった都合のいい能力の獲得は流石に不自然すぎます。

 

スパイダーマンの甘さの方向性も少し疑問です。薬で狂暴化したせいとは言え、人殺しをしているグリーンゴブリンの正体をノーマンだと世間や息子である親友に明かさないのは本当に優しさ、許しと言えるのでしょうか。

 

案の定親友はスパイダーマンが父親を殺したと思い込むわけですし、そうでないと次回作につながらないといえばそうなんですが罰や報復として私刑をしない、というなら別の方法で償わせる必要があります。しかし身内だからと選んだ手段が「見なかったことにして隠ぺい&フォローなし放置」はちょっといただけない気がします。

 

ブルース・キャンベル

原作者のスタン・リーのカメオ出演*4は有名ですが、ブルース・キャンベルも監督のサム・ライミの古くからの親友*5ということで出演しているんですね。端役ですしほとんどの方は誰だよとお思いでしょうけど、海外ドラマの『バーン・ノーティス』を観ていたのでなんかこの人知ってる!ってなりましたね。初見時はバーン・ノーティスを観る前だったのでこれも観なおした事による新しい発見でした。

 

ヒーロー映画としては傑作

とはいえこれだけテーマを見失わない演出構造と映像の勢い、印象的なシーンの作り方、見せ方の上手さをとても感じました。まぁヒーローとしてのカッコよさを押す作品ですからね。ジャンル上設定の多少の緩さは余程でなければ見逃されるという暗黙の了解がある気がします。

 

ではまた

 

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*1:

※オススメ度の目安は以下の通りです。

  • ☆    :もの好きなら
  • ☆☆   :よっぽど暇なら
  • ☆☆☆  :好きなジャンルなら楽しめる
  • ☆☆☆☆ :間違いない面白さ
  • ☆☆☆☆☆:絶対観るべき

*2:なんと年齢制限なし

*3:こまけぇこたぁいいんだよ!! (こまけぇこたぁいいんだよ)とは【ピクシブ百科事典】

*4:

カメオ出演 - Wikipedia

*5:これも知りませんでした